2020年の東京オリンピックに向けて急ピッチで進んでいる新しい国立競技場の建設工事。
しかし、こともあろうに屋根の取り付けが間に合わずにオリンピックは「屋根なし」で開催することが確実になったそうです。
新国立競技場の迷走
今回報道された内容によると、屋根を備えた完成には時間が足りないと言うことです。そして「屋根なしなら間に合う」と言うのが現在の見解だそうです。
しかし、これは当初から心配された出来事と言いますか、このデザイン案を採用した時から抱えていた問題点であったと言うことです。
デザインコンペ
新国立競技場の建設に関しては、2012年にデザイン案を公募しています。
事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が新国立競技場の基本計画に関する国際デザイン・コンクールを開催し、最優秀に選ばれたのが今回のデザイン(その後一部変更)で英国の設計事務所、ザハ・ハディド・アーキテクツ案でした。
コンペにおける一次審査では主に実現可能な技術的見地から次の項目を確認したそうです。
- 可動席
- スタジアムへのアクセスや入退場の動線計画
- 音響環境
- 省エネ技術
- 屋根の開閉機構
- 工期
この時点で6点が通過し、現デザインのザハ案もパスしています。
二次審査では
- 未来を示すデザイン
- スポーツ・イベントの際の実現性
- 技術的チャレンジ
- 実現性
- その他、評価すべきポイント
の項目が確認され、コックス・アーキテクチャー、ザハ・ハディド・アーキテクツ、SANAA+日建設計の3点が残りました。
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この時のザハ案に関する審査委員のコメントには
- 技術的に解決あるいは調整しなければならない箇所はあるが、チャレンジするに値する造形で、オリンピックに必要なインパクトがある
- 日本の現状から見て、少しチャレンジブルなものがあってもおかしくない。技術的には可能だろうが、コストがかかることが懸念される
- ダイナミックで面白いが、内部空間の性格と外形がつながらない。天井面が強烈で、競技者にとってどうか懸念される
と言った問題や課題が指摘されていました。
決め手は「世界に発信する力」
最終的に現在の案が選定された理由は
「強いメッセージ性と日本の技術を世界に示すことのできる最も優れた作品」
としてザハ案が最優秀となったそうです。
とは言え
「最優秀案は相当な技術力が必要で、これが日本でできれば世界へのインパクトがある」
「材料、工法、構造技術、設備技術について、日本の優秀さを世界にアピールできる」
とも言われ、相当な技術や解決すべき問題が多いことがデザイン選定時点でわかっていたことなのです。
追い打ちはスケジュール管理
新国立競技場に関しては、当初案をそのまま建設するとコストが膨大になることや、まだまだ技術的に解決すべき点も多いためか基本設計を縮小しコスト圧縮と工期短縮などの効果を狙った様です。
しかし基本設計自体が当初予定から2か月以上遅延してしまう等問題含みのスタートとなり現在の事態に至ったと言えそうです。
「日本の技術力をもってすれば・・・」と言う思いもあったのだろうと思いますが、根拠のない自信はどこぞの国と同じになってしまいます。
このままでは日本も笑いものになってしまわないか?と心配ですね。
せっかく誘致した東京オリンピック。そのメイン会場の国立競技場がこの有様では不安になってしまいます。
関係者のみなさんが努力されていることは承知していますが、出来る範囲での最高なものが完成することを願っております。